私たちにとって「ファッションをもっと楽しむ」とは

A-Cross

プライドマンス特集【前編】LGBTQ+の当事者として。アライとして。みんなでできること、考えたいこと。

アダストリアでは、日本最大規模のLGBTQイベント「レインボープライド」に参加したり、セクシュアル・マイノリティ の人を理解・支援する「アライなお店」を目指して全国の店舗でレインボーフラッグを掲げたりと、LGBTQフレンドリー企業としてさまざまな取り組みを行っています。

今回は、2023年6月からスタートする「アダストリア プライドマンス」を前に、セクシュアル・マイノリティをテーマにしたクロストークを開催!セクシュアリティを隠さず自然と働くダストリアの三浦大平さんと、トランスジェンダー俳優 として活躍する若林佑真さんに、LGBTQ+の当事者としてさまざまなお話を語っていただきました。気になる話題でいっぱいのトーク、まずは【前編】からご紹介!実体験を交えた、ふたりのリアルな声をお届けします。

「LGBTQ フレンドリー企業」として、
さまざまな取り組みを行ってきたアダストリア。


三浦:アダストリアの関東支店でマネジャーをしている三浦です。友達からは「タイヘイちゃん」とか呼ばれますね。今日はセクシュアル・マイノリティをテーマにいろいろお話しできればと思います。

若林:タイヘイちゃんだから「タイちゃん」ですね!僕は若林佑真なので、今日は「ワカちゃん」でお願いします。タイちゃんとは以前も、アダストリアのダイバーシティ研修動画の撮影で会いしましたよね。僕がお客さん役になって接客してもらって……。

三浦:懐かしいですね!そうそう、ワカちゃんがトランスジェンダー(※)男性であると知らずに僕が接客をして。その様子をお店で働くスタッフに研修動画として公開したんですよね。

若林:体型が小柄な僕でも、メンズ服を 着られる方法とか提案してくれて、すごく楽しく買い物できましたよ。

三浦:本当ですか!?ありがとうございます。


若林:僕は身長が156cmで、服のサイズにはいつも困るんです。店頭で販売しているメンズ服は基本的にMかL。XSは滅多にないので、基本はネットで購入します。でも、タイちゃんみたいな接客をしてもらえるなら、もっと店頭で服を買う機会がふえそうだなと思っていました。


※トランスジェンダー:生まれたときに割り当てられた性と、自分自身が認識する性が一致していない人のこと。

隣の人が、目の前の人が、そうかもしれない。
それぐらい、当たり前の存在だから。


三浦:僕はLGBTQ+でいうところのG(ゲイ)。職場でも男性同性愛者であるとカミングアウトしています。でも、すごくのびのび働いているし、日常生活で生きづらさを感じることもほとんどないです。強いて言うなら、飲み会とかで僕がゲイだと知らない人から「彼女いるの?」と聞かれるときがあって。

若林:あー!「どういう女の子がタイプ?」とかね。

三浦:その度に「アハ!すみません!僕恋愛対象が男性なんです」と、必ず「すみません」をつけるんですよ。悪いことをしているわけじゃないし、何となく違和感はありますね。

若林:でも、同性が好きだとちゃんと伝えるんですね。

三浦:僕の場合は伝えますね。そうしないと、相手もどう接していいかわからないんじゃないかなと思って。

若林:僕も移行期(※)の頃は、見た目が「ボーイッシュな女性」だったので悩むことが多かったです。男性用トイレと女性用トイレのどちらに入ればいいかわからなくてトイレに行けないとか、温泉も絶対に入れなかったし……今はホルモン注射を打ってヒゲも生えて、胸の手術もして、男性として社会生活を送れるようになったので、自己肯定感が高まってきたこともあって、しんどいと思うことはあまりないですね。


三浦:昔と比べて、社会の空気も変わってきていますもんね。

若林:でも、セクシュアル・マイノリティに対する認識が広まると同時に、誤解や勝手なイメージが広まっているとも感じます。以前、「トランスジェンダー女性が女性スペースを使用することを認めると、“男性器がついた男性”が女性スペースに入ってくることになって、性犯罪も増える!」」 という偏見が広まるのを目の当たりにして、「違うのに!」って。

三浦:トランスジェンダーだと偽って罪を犯す人がいるのは事実なので、警戒心を持つのは悪いことじゃないですよね。でもワカちゃんの言う通り、当事者の方の実態を知らないまま、勝手な判断はしないでほしいと僕も思います。


若林:「誤解です!」「違います!」と実態を伝えたいけど、いくら僕たち当事者が声を挙げても、届かないんだと、実感しました。トランスジェンダーは人口の1%ぐらいしかいないとも言われているから、マジョリティの人の声にかき消されてしまう。防犯を考えると同時に、当事者の声や実態をもっと知ってほしいとも思いますね


※移行期:その人の性自認に合わせて、外見や身体を移行する(変える)期間のこと。

「同性愛はダメなこと」
自分自身が、そう思い込んでいたのかも。


三浦:僕は今でこそゲイであることをオープンにしていますが、学生時代はずっとノンケ(異性愛者)を装っていました。

若林:僕も、学生時代に女の子と付き合っていましたが、誰にも話しませんでした。でも、雰囲気が出てしまったのか、先生に「アンタら、やましい関係なんちゃうん!?」と言われて。言葉にされると「自分はやましいんだ!」って感じちゃうんですよね。今はそんなことないですが、当時は「女の子が好きだなんて誰にも言えない」と思い込んでいました。

三浦:僕も、昔から何となく男性が好きな自覚はあったけれど、自分がゲイだとは認めたくなくて。いつもどこか不安で、仲のいい男友達ができても「迷惑をかけるんじゃないか」と変に気を遣って距離を置いたりして。


若林:どうして迷惑をかけると思ったんですか?

三浦:僕がゲイだと思われたら、「アイツ“ら”」ってなるじゃないですか。

若林:「タイちゃんが」じゃなくて、「ふたりとも」同性愛者だと思われると感じたんですね。

三浦:当時は今と社会の雰囲気も違ったので、なおさら「友達は異性愛者なのだから、同じだと思われてはいけない」と悩んでいましたね。

若林:タイちゃん自身も、ゲイであることに対してネガティブなイメージを持っちゃってたんだ。

三浦:そうですね。物心がついた頃から特に疑いもせず、男性が男性を好きになるのは悪いことだと思っていました。


若林:でも、めっちゃわかる!だからこそ、僕が伝えたいのは「LGBTQ+の人はたくさんいる」ということ。もし、「身近にセクシュアル・マイノリティの人がいない」という人がいたら、それは気づいていないだけなんです。当事者の人が気づかれないように努力したり、戸籍を変えたり、見た目を変えたりしているだけで。電車で隣に座っている人や、職場で目の前にいる人が、同姓愛者かもしれないし、恋愛をしない人かもしれないし、トランスジェンダーかもしれない。それぐらい目に見えにくい存在で、身近な存在であることは、もっと知ってもらいたいですね。

三浦: その人がマイノリティなのかマジョリティなのかなんて、話してみなきゃわからないじゃないですか。男性だから、女性だから……もっと言えば、トランスだから、ゲイだから、レズビアンだから、アセクシャルだから……そういうカテゴリだけで「この人はこうだ」と決めつけるのではなく、もっと個人を知って、それから判断してもらいたいと思いますね。さっきの「彼女いるの?」のセリフも正にそれで。「男性だから女性が好きだろう」じゃなくて、「この人はどんな人が好きなんだろう」「そもそも恋愛をする人なのか」みたいなところから知ってもらえたらいいなと思います。


2023年5月15日(月)に【後編】を公開予定!


自分自身の経験や、社会全体を見たときに感じることなど、さまざまな話題で盛り上がったクロストーク前編。ふたりのお話はこのあともまだまだ続きます!
【後編】では、人生ではじめて「トランスジェンダー男性である」「ゲイである」とカミングアウトしたときのエピソードや、接客されたときの「声かけ」で感じたこと、アライとして大切にしていること、この記事を読むすべての人に知ってもらいたい、考えてもらいたいことをたくさん語っていただきました。ぜひ、ご覧ください!


「LGBTQ × Shopping」研修動画
何も知らされていない当社のスタッフ2名が、セクシュアル・マイノリティの当事者の方4名を接客。その後、インタビューを通じてセクシュアル・マイノリティや多様性について学び、これまでの接客を振り返ります。そうして、アライ(セクシュアル・マイノリティの理解、応援者)な店舗・販売スタッフになるために、改めて「お客さまに寄り添う」ために、どのような心構えが大切であるかを考えるダイバーシティ研修動画です。

研修動画掲載先:https://youtu.be/b9Vf3PC-lO0


 若林 佑真 (わかばやし ゆうま)
女性として生まれ、現在は男性として生活するトランスジェンダー男性の俳優 /舞台プロデューサー。1991年、大阪出身。同志社大学神学部在籍中から演技などのレッスンを受け、卒業を期に上京。俳優やラジオパーソナリティーの他、東京レインボープライド2016、2017ではステージパフォーマーとして出演し、脚本・プロデュースも担当。20歳からホルモン治療を開始。国内の病院にて、24歳で乳房切除・乳線摘出手術を受ける。
<出演作品>
テレビ東京 木ドラ『チェイサーゲーム』渡邊凛役
TBSラジオ『アシタノカレッジ』木曜アシスタント


Recent

Play fashion! HOME